多焦点レンズと単焦点レンズの違いは?白内障手術で後悔しない選び方を、日本の提案と比べながら院長が解説します
多焦点レンズと単焦点レンズの違いを白内障手術の観点で比較。向かない方も含め院長が正直に解説します。
キム・ソニョン 代表院長
角膜・緑内障・白内障
目次
「日本の病院では『あなたは単焦点で十分ですよ』と言われました。でも韓国では多焦点を勧められると聞きます。どちらが正しいのでしょうか」——先日、東京からお越しになった58歳の患者さまの、最初のご質問でした。
多焦点レンズと単焦点レンズの違いは、白内障手術で「どの距離を優先し、その代わりに何を差し出すか」の違いです。性能の優劣ではありません。白内障手術は濁った水晶体を取り出し、その位置に眼内レンズを入れる手術ですから、どちらを選んでも「レンズは必ず入る」のです。日本の先生が単焦点を勧められたことにも、私が多焦点を検討することにも、それぞれ根拠があります。違うのは技術ではなく、その方の生活のどこに重心を置くかという判断です。
多焦点か単焦点かは順位づけではなく、「メガネを減らす」か「夜間の見え方の質を守る」かという交換条件の選択です。
現実的な選択肢は三つ——正直に並べて比べます
| 比較項目 | 単焦点レンズ | EDOF(連続焦点) | 3焦点・多焦点 |
|---|---|---|---|
| 得意な距離 | 主に一つの距離(多くは遠方) | 遠方〜中間が連続 | 遠方・中間・近方 |
| メガネ | 手元は老眼鏡が前提 | 細かい字に補助が要ることも | 依存を減らせる可能性 |
| 夜間のにじみ・ハロー | 比較的少ない | 中間的 | 自覚する方がいる/適応期間が必要 |
| 向いている方 | 夜間運転が多い・コントラスト重視 | PC作業や会話が中心 | 読書やスマホが中心・メガネを減らしたい |
| 費用の目安(片眼) | ₩1,250,000 | アイハンス ₩2,500,000 など | リサトリ ₩3,000,000〜シナジー ₩7,000,000 |
表の右側に行くほど「見える距離」は増えますが、光を分け合う分だけ夜間のコントラストは譲ることになります。3焦点とEDOFの内部設計の差は想像以上に見え方を左右しますので、その仕組みは多焦点眼内レンズの種類を比較した解説にまとめました。韓国本院で扱うレンズの一覧は프리미엄 인공수정체(プレミアム眼内レンズ)のページでもご確認いただけます。
多焦点レンズをお勧めしない方を、先に申し上げます
- 夜間の長距離運転やタクシー・トラック業務など、暗所視力が仕事に直結する方
- 黄斑疾患や視神経の障害があり、そもそも網膜側のコントラストが落ちている方
- 角膜が不規則(過去のLASIK後の不整、強い角膜混濁など)で、光の分配が乱れる方
- ドライアイが強く、涙液層が安定しないために計測値そのものが揺らぐ方
- 「一切メガネを使いたくない」という期待が強く、わずかな見え方の妥協も許容しづらい方
最後の項目は医学的な適応というより心理的な適応です。私は、期待値が実際の設計性能を上回っていると感じたときは、はっきりお断りすることがあります。
逆に、単焦点が最適解にならない方もいます
手元を見る時間が一日の大半という方——読書、裁縫、譜面、スマートフォン中心の生活の方が単焦点を選ぶと、白内障の濁りは解決しても老眼鏡の生活はそのまま続きます。「白内障は治ったのに不便さが変わらない」という落胆は、実際によく伺います。どのみち水晶体を入れ替える時期であれば、老眼・白内障同時矯正の詳しい内容を一度ご覧いただき、選択肢として検討する価値はあります。
日本と韓国で比べるべきは、金額ではなく「総額の中身」
レンズによって費用が大きく変わります(片眼・当院公表価格)
日本の見積もりと並べるときは、検査費・レンズ代・術後管理がどこまで含まれているかを揃えないと比較になりません。その揃え方は韓国の多焦点眼内レンズ費用と日本の見積もりの比べ方で具体的に書いています。
結果の8割は、手術前の検査で決まります

生体計測で度数を算出し、角膜地形図で乱視と表面の不規則さを、さらに瞳孔径、涙液層、黄斑と視神経の健康まで確認します。涙液層が不安定なまま測ると度数誤差が生じるため、この工程は急ぎません。回復は数日が目安ですが、見え方が落ち着くまでの経過は白内障手術後の回復のたどり方にまとめています。
どちらのレンズにも、避けられない代償があります。それを知ったうえで選んだ方は、多少の不便があっても納得して過ごされます。知らずに選んだ方は、どんなに良く見えていても釈然としません。私の仕事は良いレンズを売ることではなく、あなたの昨日一日の見え方を一緒に思い出すことだと思っています。ソウルでも、日本でも、その順番だけは変えずに選んでください。
ヒーリング眼科 代表院長 キム・ソニョン
よくある質問
日本では単焦点レンズを勧められました。その判断は間違っているのでしょうか。
いいえ、間違いではない可能性が十分にあります。夜間運転が多い方、コントラスト感度を重視するお仕事の方、黄斑や視神経に既往のある方には、単焦点のほうが理にかなう場面が現実にあります。私も検査結果によっては単焦点をお勧めします。大切なのは「どちらが上か」ではなく、検査数値とご自身の生活パターンの両方を照らし合わせて決めることです。
多焦点レンズを入れれば老眼鏡は完全に不要になりますか。
そうお約束することはできません。多焦点やEDOFレンズはメガネへの依存を減らすことを目指す設計ですが、薄暗い場所での細かい文字や長時間の読書では補助のメガネを使う方もいらっしゃいます。見え方には個人差があり、瞳孔径や角膜の状態、乱視の残り方によっても変わります。「ゼロになる」ではなく「減らせる可能性がある」という前提でお考えください。
多焦点レンズの夜間のハロー・グレアは、いつか慣れますか。
多くの方は数週間から数か月かけて脳が見え方に適応していき、気にならなくなっていきます。ただし全員が同じように適応するわけではなく、一部の方は夜間のにじみやコントラストの低下を持続して自覚されます。夜間運転の頻度が高い方には、この点を事前にはっきりお伝えしたうえで判断していただきます。どうしても適応が難しい場合にレンズ入れ替えを検討することもありますが、追加の手術侵襲を伴います。
白内障がまだ軽いのですが、老眼のために早めに手術したほうがよいですか。
水晶体の濁りが軽く、生活に支障が出ていない段階で急いで手術する必要はありません。眼内レンズ手術は自分の水晶体を取り出す不可逆的な処置ですから、時期の判断は慎重であるべきです。40代・50代で老眼だけが主な悩みであれば、老眼LASIK・LASEKなど別の選択肢を先に検討することもあります。検査のうえで「今は手術しないほうがよい」とお伝えすることも珍しくありません。
韓国で手術した場合、日本へ帰国した後の経過観察はどうなりますか。
当院では手術翌日の診察までを韓国滞在中に組み込み、その後の経過はLINEやWhatsAppでご相談いただけます。日本語通訳が常駐しているため、症状のご説明も母国語で行えます。ただし炎症や眼圧上昇など、実際に眼を診なければ判断できない症状もありますので、ご帰国後に受診できる眼科をあらかじめ確保しておいていただくようお願いしています。この点は渡航手術の現実的な制約として、必ず事前にご説明します。
乱視があっても多焦点レンズを選べますか。
角膜乱視がある場合はトーリックタイプ(ファインビジョン-T、リサトリ-T、アイハンス-Tなど)で同時に矯正する方法があります。ただし乱視の軸が不安定だったり、角膜表面が不規則だったりすると、多焦点の見え方の質が落ちるため適応外と判断することがあります。角膜地形図と涙液層の検査で、その見極めを先に行います。乱視があるかどうかより、角膜が「規則的か」が判断の分かれ目です。
